巌頭之感 藤村 操
悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て此大をはからんとす。
ホレーショの哲學竟(つい)に何等のオーソリチーを價するものぞ。
萬有の眞相は唯一言にして悉す。
曰く「不可解」。我この恨を懷て煩悶終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで胸中何等の不安あるなし。
始めて知る大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。
1903年5月 17歳没