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動詞から考えてみる。
物事を考えるとき、特にアイデアを出すときにけっこう有効な考え方は動詞から考えること。かの大旋風を巻き起こしたポケモンの製作者は、ゲームを製作するときは毎回、ひとつの動詞にしぼりこんでテーマを決めるそうな。そういう風にハッキリと動詞をテーマとして扱うことで、シンプルなゲーム性を追求していくわけだ。ポケモンの場合は「集める」。
少年時代、昔の子なら昆虫採集とかに向けられていた関心をポケモンの世界に向けさせたわけである。こうして提示された動詞があると、開発する人たちも取り組みやすいことだろうと思う。なにをどうしてどうやっても、とにかく「集める」ということに集約されている世界なのである。
小説でも、書きはじめに行き詰まるとき、時々「動詞で言うならどんな話だろう」とか考えることがある。これは闘う話?笑う話?閉じ込める話?隠す話?
僕のオススメの動詞は「逃げる」という単語。逃げるという言葉自体がすでに持っている後ろめたい感じや、負けている感じが好き。言葉自体が持っているイメージというのは、裏切っていく楽しみが生まれるので、物語を構成する上でも親しめるものになる。
本当は「逃げる」という行動自体は千差万別のはずである。勝ち逃げしてる場合も、逃げることで追うことになる場合も、ある。けれど言葉の「逃げる」には受け取った時点で多くの人に「負」のイメージを与える効力がある。だから面白いのである。
具体性を伴わない動詞には、魅力を感じにくい。例えば「考える」とか。「考える」でも使いようだとは思うけれど、「考える」なら誰だって考えてるわけだし、考えるというのにはどうしても「何について」とかを付加させないと広がりを生みにくい気がする。「動詞」以外の「付加」は二次的な作業で、それではテーマとして与えるには力の弱い「動詞」ということになる。もしゲームをつくるなら「戦う」というテーマを考えるとしても、戦う方法についてもっと具体的な動詞・・・「斬る」とか「殴る」とかそういう動詞を当てはめた方が面白い発想が期待できるように思う。
考える。考えていることすらわからずに考えている。思いつかない以前に何を考えているかも理解できない。
ついでに最近の僕の動詞は、ちょっと難しい「鳥瞰する」という言葉を考えている。
動詞と一口にいってもとてもたくさんある。「はじまる」「手に入れる」「変わる」「失う」「持ち歩く」「忘れる」「手放す」「捨てる」「思い出す」「無くす」「つくる」「拾い上げる」「終わる」「こわす」「生まれる」「気づく」「得る」「疑う」「信じる」
僕はすごく昔を知る人に「変わらない」と言われがちです。よくも悪くも。
まあ、そういう点では、いいことですね。
「失っていない」ってなんかいいでしょ?