東京 

 余裕が出来た。

 生まれ育った場所に戻って、会いたかった人にも会った。やり残したことも済ませてきた。そのおかげかある程度の精神的余裕ができた。おかげで本を読むゆとりもでてきたし、僕が、素晴らしい小説や音楽に出逢う時に感じるような感動を、いつか人に返したいと思えるようになった。少しずつだけど小説のプロットというか概略も出来てきている。とりあえずゴールは見えないけれど、ゴールが見えたときのために今を精一杯頑張っていこうと。貪欲にイイ男になってみたい。あいまいだけどそれから最終目標が大きく外れることもないだろう。

 「どうだい、元気でやっているかい」という問いかけを何度も聞いた。尋ねているのは過去の自分だ。僕は不幸ぶりたかった。過去の自分になんとかしてこれから陥るいくつかの残念な事実を教えてあげたかった。でも、過去の自分にとっていつまでも未来は未知だった。現在の自分が明日のことを観られないことと同じだ。彼はきっと数年後、ここに降り立ってしまう。
 
 「時々しんどくなるよ、でも元気だよ」という答えをできるようになるために、僕はこの人生のほとんどの時間を費やしていた。
 
 運命の分かれ道はいくどもいくども現れるから、もしもこちらを選ばなかったならという「if」の世界もたくさんたくさん現れる。でも、友達が来て、一緒にご飯を食べて時には宙を見上げる。この世界が僕の真実だ。
 
 何度でも繰り返そう。もしもこの先、過去の自分が現れても「毎日楽しく暮らしているよ」と自信を持って伝えるために、20年間で培ったささやかな能力とちっちゃな才能にしがみついてがんばろう。高校の頃の心を思い出して、抱いた夢をかなえるため、悔しさをバネに優しさを胸に。

 できることが広がって行くという快感は、訓練にしか伴わない。アートでも武術でも職人でも係員でも、なんでもそうだろうと思う。昨日できなかったことができるという自分。いつかやりたいと思っていたことに到達する、自分。

 踊らなければならない。足が痛くても、熱く、強く、多角、速く、上手に踊らなければならない。人には上手く踊っているように見えなければならない。躓いてしまってもわからないくらいに。合わせなくてはいけない音楽は、早いけれど。
 
 なんでも一生懸命に生きていたら、いつかどこかに到達できるかな。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送